適刊・近衛虚作

喀血劇場主宰・近衛虚作(このえ・うろつく)がつれづれに侍るままに、由無し事ども書きつくるなり

京大と公安と演劇と吉田寮(追記あり)

 僕の出身校である京都大学(卒業したとは言ってない)で、事件が起こった。
 構内に侵入した京都府警の警官(警備2課、いわゆる公安)が、身元がバレて学生らにとっ捕まったのだ。

書き方が一番好みな京都新聞の記事

私服警官、京大でつかまる 大学「通告なく立ち入り遺憾」 : 京都新聞

 4日午後0時20分ごろ、京都市左京区吉田二本松町の京都大吉田南構内で、京都府警の男性警官1人が学生とみられる男性に取り押さえられる騒ぎがあった。大学関係者も加わり話し合った結果、警官は約3時間後に大学を退去した。

 府警の説明では、警官は極左暴力集団などの犯罪捜査に当たる警備2課の巡査部長で別の捜査員とともに私服で勤務中だった。構内では、2日に東京都内でデモ行進していた京大生が警視庁に公務執行妨害の疑いで逮捕されたとして、抗議活動が行われていた、という。

 京都大学京都府警との間には「大学構内に入るときには事前に知らせろよ。んでもって、大学教職員と学生立ち会いのもとで入れよ」という鉄の掟がある。(緊急時にはその限りではない。事後に警察から報告が入ることもある。)「何で大学に警察官が入ったらあかんねん」という声があるが、そら学問の自由ってやつですわ。今回、京都府警は鉄の掟を破ったうえに、事件の疑いがあるんで調査するからな(顔真っ赤)とか言いよる。今回公安は演説を監視していたわけだが、「おまえらの演説なんざ学問ちゃうわ。ただの政治活動やんけ」となれば、東大ポポロ事件とおんなじような流れをたどるのかもしれない。

学問の自由 - Wikipedia

東大ポポロ事件 - Wikipedia

 本論からはずれそうになるんでこれ以上事件そのものは深く掘り下げないが、事件に対するウェブ上の反応を見てると何だかなーという気持ちになるのである。公安をとっ捕まえた学生が「極左暴力集団」に所属してたかどうかはとりあえずどうでもよくて、公安の捜査が法に則っていたかというのが重要なのではないか。そこをほっぽって「サヨクざまぁ」とか「公安に目をつけられるような奴はどーのこーの」言うてるやつはやっぱり頭がおかしいと思う。なぜなら違法捜査がはびこれば、あなたも私もみんなが逮捕されてしまう。本人がお行儀のいい愛国小市民のつもりでも、なんだかんだと言いがかりをつけてブタ箱にぶちこまれて起訴されれば、99.9%は一審で有罪判決をいただける。不起訴になったり、無罪判決が出たところで、マスコミが疑わしきは犯罪者として報道してくれる以上、もうむちゃくちゃだよ、となるわけだ。それでも自分は関係ないっていうんなら、「冤罪」でググったらいい。アリバイがあろうが、素行に問題なかろうが、冤罪を作り出して真犯人をぬくぬくさせるだけの無能な警察・検察・裁判官がいっぱいいるのがわかるっしょ。

 大学は文科省の認可が下りないと設置できないけど、体制にとって不利だろうが、公益性が薄そうだろうが、特定の学問やら研究を国が禁止したり、取り締まるのはおかしい。
 演劇だって同じ。東大ポポロ事件では客席に公安がいた。テント芝居で客席にいた公安をぼこぼこにした人の話を聞いたことがある。作品を評価するのは権力ではなくて客席だ。
 今は自由があるかもしれないけど、その自由は天賦のものではないんだぜと。大学で学問やってる人や自分が表現する人間だと思ってる人は、人一倍そこら辺に敏感じゃないといけないと思うんだけどな。

 話は変わるが、京大でこういうことが起こるたびに一部で吉田寮が取りざたされる。
 いわく吉田寮は「暴力左翼学生」の巣窟で、人によっては中核派のアジトだったり、革マル派のアジトだったりするわけだが、少なくとも俺が住んだ10年間、吉田寮自治会が特定の思想信条を持つ団体の、あるいはその下部組織のアジトになったり、乗っ取られたりしたことはない。吉田寮には夜毎大声で叫ばないと正気が保てないやつとか、決められた時間に絶対来ないやつとかは山ほどいるし、窃盗は起こるし、ヤギの糞まみれだが、住んでもない、遊びに来たこともない、もしくは直接迷惑をこうむったことのないやつにぎゃーぎゃー喚かれる筋合いはない。何より喀血劇場さんが産声を上げたのも吉田寮だ。

 権力の横暴と当事者性を欠いた言説を許すなと、そういう話でした。

 

以下、追記(2014-11-07 19時頃)

 ちなみに、11月7日に京大正門でマスコミ向けの記者会見を行った「同学会中央執行委員会」は正規の手続きを経ていない「自称・同学会」。

京都大学同学会

中執ブログ!

上にあげた二つのリンクはこの「自称・同学会」のもの。

この「自称・同学会」についてはこちらのTogetterが詳しい。


京都大学新同学会選挙に関するまとめ - Togetterまとめ

 彼ら「自称・同学会」とその取り巻きに、俺は在学中、一度も連帯をしたことはないし、彼らがこれまでのもろもろを反省しない限りはこれからも連帯することはない。この騒動を機に、彼ら「自称・同学会」がおかしな持ち上げ方をされたり、正当な全学自治体として認定されることは容認できない。

 た・だ・し、

 それはそれ、これはこれ。「自称・同学会」の主義・主張・やり口がどうであろうと、公安の捜査が妥当なものであったかどうかは話が別だ。